<連載読み物>
小田原 青色申告会 発行 青色NEWS WEB
青色NEWS WEB

2011年10月号〜2013年9月号
平成経営者への応援歌

 平成経済に「強い経営者」「弱い経営者」






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

経「おいおい、今回のお題は話す前から冷や汗モンだよ。多分おいらは弱い方になるんだろうな」
青「まぁまぁまずは設問に答えて行きましょうよ」
経「胸バクバクだよ」
青「まず、事業は誰の為にありますか?」
経「おっと、そりゃ『お客様の為』だろ?伊達に青色Newsを読んでないよ」
青「そうです。顧客の為です。でも問題は、頭で解っていても、行動に表れているか?ですよね」
経「行動?って何?」
青「社長さんのお店の壁の色は何故ブルーなんですか」
経「爽やかだろう?俺は昔っから青が好きなんだ」
青「僕も青が好きですけど、社長さんのご商売と何ら繋がりがあるんですか?」
経「俺っちは飯屋だけど色は俺の好み。関係ない」
青「ブルーは清潔感や信頼感があって医療や教育、健康や生活サービスに良く用いられますが、もう一方で食欲を失わせると言う働きもありますので、あまり飲食には向きません。但し、お寿司屋さんや料亭が使う藍色は、青に赤を混ぜているので食欲は失われません」
経「おいおい、じゃ、おいらの勉強不足ってか?」
青「昭和の時代、バブルの時代など、需要が強くお客様の選択肢が少ない時代には正直どんな色でも外観でもお客様は利用しましたが、今の様に供給が強く、お客様側の選択肢が多い場合は、外観のイメージや色合いも大きな選択要因になります」
経「でもよ。色ぐらい経営者の好みで良いんじゃないの?」
青「お店の名前、何故『わたなべ』なんですか?」
経「なんだ?ケンカ売っているのか?俺は渡辺だぞ。渡辺が『わたなべ』じゃ悪いのか?」
青「いえいえ冷静に。お客様からすればお店が『わたなべ』だろうと『のだ』だろうと関係ないんですよ。大事なのは『何屋』かです」
経「そりゃ飯屋だよ」
青「お客様はこの店に入ると何の料理を出してくれるかを知りたいんです」
経「入りゃわかるっての」
青「今のお客様は入ってガッカリしたくないから、入る前に情報を得ようとします。だから、昭和のまんま、情報が外に出てこないお店には入れないのですよ」
経「入らないんじゃ無くて入れないのか?」
青「平成の時代は事業がお客様に積極的に訴えかける戦略がとられています。大手の外食産業はテレビCMは勿論、ホームページやチラシなどありとあらゆる情報を駆使しています」
経「大手は関係ないよ」
青「関係あります。実際今お客様を取られているのは同じ規模の同業者じゃなくてフランチャイズや直営店などの企業型店舗ですよ」
経「そう言えばそうだな」
青「大企業とは手段が違う、味が違うと言っても、大企業もこの20年色々努力して社長さん達の味に近づいています」
経「まぁ昔よりは美味くなったかもな。でも味なら全然負けないよ」
青「そりゃ負けませんよ。味でも独特の魅力でも負けません。でも、負けている処はあります」
経「売上だろう?」
青「それもそうですが、そもそも何故凄い売上が上がるのでしょうか?」
経「大手だからだろう」
青「そればかりじゃないんです。彼らは顧客が好きな色を使っています。何のお店かを外部にアピールして、店名もインパクトのあるものを採用しています」
経「俺の店は、俺の好きな色で、俺の名字で、外側になにもアピールしてない」
青「勝つも負けるも、勝負さえしていないんですよ」
経「勝てるのか?あんな巨人に…」
青「味はどうです?」
経「味なら絶対負けねぇ」
青「最後の最後は味です。そこに行き着くまでの情報提供、宣伝アピール、外側への商品紹介、初めての人でも安心して入れるような外観。それらが備われば、それでも勝てないですか?」
経「うーん。そこまで揃えば勝てるのかな?」
青「勝てますよ。個性的で、オリジナルで、暖かくて、知れば知るほど面白い人間性があって、社長のお店には魅力が一杯ですよ。ただ初めての人が入れる外観と、初めての人でも心地よい内装、そして、お店の中の魅力が解る情報を外に出す」
経「簡単じゃねぇなぁ。でもよ、前よりも自信が出てきたよ。もう、このまま売上が落ちていって終わるのかと覚悟していたよ」
青「勝負をする前に諦めてどうするんですか」
経「勝負前…か?」
青「そうです。勝負はこれからです。まだ何も勝敗は付いていません。個性的て魅力一杯の個人事業店の逆転劇のはじまりです」
経「俺でもできるのか?」
青「平成経済に強い経営者とは、過去に固執せず、変化を受け容れる柔軟性のある経営者のことです」
経「何も遅くないんだな」
青「今からです。景気が底をついて上昇に転じます。多くの人が事業にオリジナルな価値を求めます。大きな事業には苦手な事。それを逆手に逆転しようじゃありませんか」
経「おーし、頑張るぞー」

●2011年10月号掲載

 平成経済に「強い経営者」「弱い経営者」 その2






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

経「いやぁ、先月は青色さんのヨイショにのっちゃって、そりゃ偉いやる気が出て、で、どうするんだっけ」
青「ガクっ。先月はお客様目線=お客様主義で行きましょう。でしたね」
経「そうだった。で、ほら、大きな企業やフライド何とかに勝つ手段って、あれ」
青「フランチャイズです。唐揚げ食ってどうするんですか?そうです。大手との戦い方ですよね」
経「そうそう、なんかその話聞いて、ブルって来たよ」
青「要するに、考え方なんです。相手の長所短所を知り、自分の長所短所を知れば、あとはどっちが有利かってことです」
経「おれっちみたいな小さな事業所でも有利になる場合もあるの?」
青「場合どころか、勝算は充分にありますよ」
経「嬉しいこと言うねぇ。で、勝つためのポイントってあるんだろう?」
青「勿論、先ずは…」
経「先ずは?」
青「必ず勝とうと思うこと」
経「???」
青「誰かに勝たせもらうのでは無く、自分で勝つ。勝てると心から思うことです」
経「勝てるかどうか解らないのに思えるかよ?」
青「社長さん、昔、柔道やられていたんですよ?」
経「おう、そうだよ。そりゃ鳴らしたもんさ」
青「その勝負は、最初から勝てる試合でした?」
経「な訳あるかい。努力して努力して、自信をつけて臨んだけど、勝てる保証なんてなかったさ」
青「商売も柔道も同じです。最初から勝てる試合なんてない。何度負けても勝つまでは諦めない。その気持ちが何より大事なんです」
経「もっと楽に勝てる方法は無いの?」
青「小さな事業所が大手に負ける原因がそこなんです」
経「原因…?」
青「そうです。戦後の荒廃から復興してきた創業者たちは、毎日毎日、見えない明日に向かって気の遠くなるような努力を重ねてきました」
経「俺の先代もそうだった」
青「それが景気が良くなってからは、作業効率を上げるために機械化や、面倒な作業を省いたり、様々簡素化されてきました」
経「スピードが要だからな」
青「面倒な作業だった頃はお店それぞれに個性があって、それがお客様を呼びましたが、簡素化されるとどのお店も同じになって魅力が著しく減りました」
経「個性?魅力?」
青「フランチャイズはどこに行っても同じ店、同じ商品、マニュアル化された同じサービスです。大手の弱点はここです。これを我々個人事業が真似ても、大手を越すことはできません」
経「どこも同じだよな」
青「個人事業の魅力は、個性がある事です。お店づくりも商品や品ぞろえも、個性的で魅力あるものであるべきなのです」
経「そりゃそうだ」
青「ところが、仕入れは業者まかせで、自分の足で商品や仕入れ先を見つけようとしないし、お店の作り方も徹底していない」
経「店に金かけてもなぁ」
青「その気持ちがすでに負けているんです」
経「あちゃちゃ」
青「オープンの時はお店にお金をかけなかったんですか?看板は初めから今のように汚なかったんですか?」
経「ん…」
青「大手はどこに行っても看板が同じ、サービスが同じ、今まではそれが新鮮で多くのお客様が利用しましたが、これからは違います」
経「って言うと?」
青「お客様は飽きはじめています。大手の限界、マニュアルの限界に気付き始めています」
経「じゃあ…」
青「そうなんです。今が、今からがチャンスなんです」
経「で、どうするの?」
青「面倒くさい事をすることです。他と差をつけるために、社長しかできないことを黙々とするんです」
経「何か昔を思い出すよ」
青「そうです。商売に古いも新しいもありません。基本は、面倒くさい事をすることです。面倒くさいから仕事になるんです」
経「何か忘れていたかもな」
青「まず、勝つと決めること。そして、面倒くさい事をすること」
経「大手に出来ない事か」
青「小さな事業は、小回りが効きます。お客様の要望にすぐに対処できます。そういう長所を重ねて勝負すれば必ず勝てます」
経「袋小路じゃないんだな。個人事業も未来がある」
青「これからの地域経済は個人事業が主役です」

●2011年11月号掲載

 今から出来るのか?おらが商店街の復活? その1






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

経「いやぁ、顧客主義の店作り?なんとなく解って来たけど、また教えてよ」
青「そうです。聞いただけ、感心しただけじゃ何も変わりません。社長のお店がしっかりと顧客主義になるまで、何度でも話しますよ」
経「いよっ、頼もしいねぇ。でもよ、店が良くなっても俺んちの場合、そもそも商店街がサビレちゃって、シャッター通りで、買い物客も通りゃしないんだ」
青「多くの商店街が衰退してるのにも理由があります。そもそも商店街が盛んだった頃って何時でしょうか?」
経「そうだなぁ。大阪万博とかオイルショックの頃が一番わさわさしていたな」
青「そうですね。戦後の昭和40年〜50年頃ですよね。では、その頃、誰がどの様にして商店街に買い物に来たのでしょうか?」
経「誰って、そりゃ主婦だよ。元気な奥さんたちが買い物かご片手に下げて毎日買い物に来てくれたよ」
青「歩いて?」
経「そう、歩きか自転車か、バスで来る人もいた」
青「今はどうでしょう?毎日買い物に来る人がいるでしょうか?しかも歩きや自転車やバスで来ますか?」
経「毎日は買わないな」
青「冷蔵庫が当たり前のように家庭に普及して、しかも大きくなりました」
経「歩く人もめっきり少なくなった。自転車はまだいるけど大きな買い物はしないな。バスで来る人はもう殆どいないな」
青「車の普及率が高くなって、しかも昔と違って奥様ドライバーも当たり前の時代です。近所のコンビニにさえ車で行きますからね」
経「駐車場の問題もあるな」
青「お客様の状況、環境が、大阪万博の頃に比べて大きく変化しています。それに比べて地元の商店街はどう変化していますか?お客様の環境の変化に合わせて変化していますか?」
経「アーケードを修理したり、BGMを流したり、シールやポイントカードを採用したり、あとは、集客のためのイベントとか」
青「それは商店街の復興につながりません。設備の修理やBGMは当たり前。何の魅力にもなりません。独自のシールやポイントなどよりも全国共通のクレジットカード等のマイレージやポイントのほうが好まれています」
経「でもイベントは頑張っているよ。その時は客が来るからね」
青「割り引いたり福引があったりすればお客様が来るって事ですよね」
経「まぁ、そうだな」
青「今優先してすべき事はイベントをしなくても普段からお客様が来る商店街にする事です。イベントをすればするほどイベントの時にしかお客様が来なくなります。そうして全国の商店街が衰退していったのです」
経「それが出来れば苦労はしないっての」
青「だって解決策を何もして無いですからね」
経「何?商店街を復興する解決策があるのか?」
青「あります。この2か月に学んだ事」
経「お客様にとって魅力あるお店にする事か?」
青「そうです。そういう強くて魅力あるお店で商店街を埋めるんです。万博の頃のように」
経「どうやって?」
青「来月号につづきます」

●2011年12月号掲載

 今から出来るのか?おらが商店街の復活? その2






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

経「うわぁ、来月へ続くで、もう一か月も待ったよ」
青「お待たせしました」
経「で、何の話だっけ?」
青「商店街の復活ですって」
経「そうそう、俺っちの商店街をどう復活させるか?だったよな」
青「前にもお話ししたように時代が変わっていますから商店街も変わる必要があります」
経「ほう、どう変えるかね」
青「以前、商店街が対象とするお客様エリアでは、狭い地域を対象により多くの世代の人たちを対象とする必要がありました」
経「どういうこと?」
青「例えば、靴屋さんなら、紳士靴、婦人靴、スポーツシューズ、ハイヒール、サンダル、下駄、学校の上履きなど、ありとあらゆる履物を扱っていました」
経「今だってそうだよ」
青「今は売れています?」
経「売れてないようだね」
青「取り扱い品目が多くて商品のバリエーションを揃えられず、魅力の無い品ぞろえになってるからです」
経「そういや孫も地元の靴屋じゃ買わないようだな」
青「今若い人たちは、専門店や規模の大きなセレクトショップで買っています」
経「セレクトショップ?」
青「年代層を絞り、売れる商品だけを揃えている店です。下駄や上履きは売っていません」
経「品ぞろえが少なきゃ近所のお客さんに文句を言われるよ」
青「その近所のお客さんがよそで買っているんです」
経「地元を愛してないな」
青「違います。地元愛はどのお客様にもあります。ただ、遠くへ行かなきゃ自分の好きなものが買えないからそうしているんです」
経「なんかグッとくるなぁ」
青「文句を言われないように品物を揃えるのではなく、売れる品物を揃えるんです」
経「何を置いたら売れるのかが解らないんだよ」
青「そこです。インターネットが普及して、お客様は様々な情報を得ていますが、専門家であるべき経営者が情報に疎く、お客様より情報が無い状態にあります」
経「勉強不足か…」
青「いつまでも後継に経営を渡さず、経営者が高齢化して、社会の早い流れに追いつけないんですね。それでお店も世代交代が出来ず新しいお客様が増えないんです」
経「どうしたらいいかなぁ」
青「日本全国の商店街が同じ問題を抱えています。その原因は、それぞれの商店街がそこで完結しようとしているからです」
経「完結させる?」
青「そうです。すべての買い物を弱り切った商店街で賄おうとしても、無理です」
経「で、どうする?」
青「なので、役割を狭めるんです」
経「役割?って何」
青「ターゲットです。近所の全ての世代・性別のお客さんに対応するんじゃなく、顧客対象を狭めてより豊富な品ぞろえにするんです」
経「…具体的には?」
青「社長たちの商店街には空き店舗がありますよね」
経「そりゃいっぱいあるよ商店街の半分以上ある」
青「例えばそこに、20代の女性をターゲットにしたお店を誘致するんです」
経「来てくれるかな?」
青「家賃を1年間免除したり、開店の資金を補助したり、そういうサポートが必要になりますけどね」
経「…出来ないでもないな」
青「商店街の半分以上に20代の女性をターゲットにしたお店が入りました」
経「おう、そうだ」
青「周りのお店も20代が好む商品群に切り替えます」
経「ワクワクしてきたぞ」
青「でも、重要な事があるんです」
経「来月に続く…だろ?」
青「アタリ」

●2012年1月号掲載

 今から出来るのか?おらが商店街の復活? その3






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

経「で、先月はどこまで話したっけ?」
青「商店街の空店舗にターゲットを揃えたお店を様々な手段で誘致する。つまり、明確にターゲットを絞り込むってところまでです」
経「そうそう、20代の女の子って所は覚えてたんだよ」
青「20代の女性をターゲットに『例え』たんです」
経「例え話かよ。1か月も期待してガッカリだよ」
青「ターゲット。要するに商店街の役割です」
経「なんでも揃えずに、役割を狭めて明確にするって事だろう?」
青「さすが社長。でも、ターゲットは人だけじゃないんですよ」
経「どういうこと?」
青「例えば一大飲食街にしちゃうのも手です。東京の月島のもんじゃ焼き街が良い例です」
経「でも、平日からお客が来るのかな」
青「そこが内容です」
経「内容?」
青「中途半端だと来ないけど、ある程度のラインを越えれば特別な地域として認知されます。例えば横浜の中華街。大久保のコリアンタウン。これらは大規模ですが、全国各地にはラーメン通り、寿司通りなど、地域特性を活かした名所が数多くあります」
経「観光地的な考えなのかね?」
青「言えなくもないですが、どちらかといえば『専門化・特化』ですね」
経「専門化?」
青「本来お店はどこも専門店だったんですよ。だからお客さんが頼りにして利用したんです。それがバブルの時代ごろから簡略化・自動化されて、専門家でなくてもある程度の事業が運営出来るようになったんです」
経「便利って言葉に踊らされたけど、我々経営者の怠慢だったのかもな」
青「そこにインターネットや携帯電話等の情報革命が到来しました。興味津津のお客様達が自ら情報を収集して、専門を忘れかけた経営者よりも多くの知識を得てしまったんです」
経「売れないんじゃなくて売る努力を怠ったのか…」
青「でも、事業者は専門家です。一朝一夕でこの仕事を始めたわけではありません。能書きはなくても経験や実績があります」
経「お、いいこと言うねぇ」
青「素人が学ぶより、玄人が学ぶほうがより専門性を深めることが出来ます」
経「どうしたらいいかなぁ」
青「ある商店街を全て服屋にする必要性はありません」
経「違う店があってもいいのか?」
青「中華街の多くは飲食店ですが、3割以上は全く違うお店です」
経「そう言えばそうだな」
青「渋谷109も周辺には飲食店や通常の商店街にあるお店が栄えています」
経「そうか、特徴が出せれば、お客様が集まってくる。そうすれば商店街は潤うって事なんだな」
青「そうです。20代の女性に好まれる通りを作れば、そこには20代の女性が集まります」
経「レストランも必要だな」
青「女性に優しい電気屋さんがあっても良いですね」
経「きれいな女の子が増えれば、男たちも集まるな」
青「健全に成り立てば良いですね。風紀が乱れると修正するのに多大な年月がかかります」
経「考えながら通りを作るって事だな」
青「そうです。一軒一軒が努力するのも大事ですが、やはりこのような大手術には多くの関係者の協力が必要になります」
経「行政や地域団体も」
青「そうです。内部だけでなく、広く外部から参加者を募るのです」
経「昔は余所者を入れないって風潮があったけど、今はそんなことを言っている場合じゃないからな」
青「多くのアイディアを集めるんです。商店街復興に関しては、自然発生的な成功事案はあっても、計画的成功事例はありません」
経「え、成功例が無いの?」
青「何であれ最初は成功例などありません。的確なチャレンジが成功を引き寄せるのです」
経「なら、うちの商店街が日本で最初の成功例になってやろうか」
青「その意気です。TVも来て更に活性化しますよ」
経「じゃあ次は魅力的な店づくりを教えてくれよ」
青「カシコマリマシタ」

●2012年2月号掲載

 経営者の為の店じゃない!お客様の為の店づくり その1






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

経「さて、いよいよ店づくりに入ってきたね」
青「覚えていますか?このシリーズの第1号」
経「覚えているよ。色も形も経営者のセンスを入れずに、『欲しいお客様』のセンスで作るってヤツだな」
青「そうです。で、お店には6分野の大事なポイントがあるんです」
経「復習だな」
青「まずは、認知度。これをかなえるには情報の発信、つまり、広告をします」
経「知ってもらうって事」
青「そうです。次にお店の外観です。これは入店客数、つまり、新規の利用客数を決定づけるものです」
経「これが悪けりゃ新規客が増えずに、店の売上は自然減するってやつだな」
青「三つ目は店舗内装。これはお客様の買い物に影響します。つまり、財布の紐を閉めたり緩めたりします」
経「日常とか非日常とか言う奴だな」
青「日常性・生活感が強い店舗空間では購買意欲が下がり、非日常性が強い特別な場所だと高い買い物に抵抗感が無くなる作用ですね」
経「思ったより影響力が強いようだね」
青「四つ目は商品価値。パッケージやネーミングの魅力とか、キャッチコピーやポップ・メニューなどの紹介の魅力です」
経「商品の品質は?」
青「勿論、商品品質は最後の最後にリピーターを生むために必要不可欠なものですが、パン屋さんでいきなりパンを食べて旨いから買うって試食以外には出来ません。リピート購買を除き、殆どが品質を味わう前に買うわけですから、そこへ至るプロセスが重要なのです」
経「そうそう、殆どが食べたり利用したりする前に買うんだもんな」
青「そして五つ目が、お店の人の質や外観」
?経「外観も必要か?」
青「きれいな売り子さんがいるパン屋さんとしょっぱい親父が店番をしているパン屋さん。あなたならどちらに行きますか?」
経「間違いなくきれいな方だな。しかもダッシュで入っちゃうよ」
青「残念ながら、見た目は商品や店舗ばかりでなく人にも影響してきます。ですから清潔な服装、作法など、今こそ必要なんです」
経「よくコンビニで『千円からお預かりします』って言うけど『俺から預かっているんだろう?』って突っ込みたくなるよ。『千円お預かりします』が正しいのに、変な流行りだよな」
青「最近のお客様はちょっとした事は無視します。昔なら指導してくれたんですけどね」
経「職場が人を育てるって事を忘れているのかもな」
青「そして、最後にデザインです」
経「おっと来たな?経営者のわがままじゃ無く、お客様の思考に合わす奴だな」
青「そうです。物が売れた安穏とした時代には必要が無かったけど、この厳しい時代に売り上げを伸ばすための重要なポイントです」
経「伸ばす?売り上げ伸ばすって?伸びたうどんじゃあるまいに、こんな時代にどう伸ばすのさ?」
青「それは・・・」
経「つづくんだよな」

●2012年3月号掲載

 経営者の為の店じゃない!お客様の為の店づくり その2






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

経「おいおい。一ヶ月も待っちゃったよぉ。売上、売上。本当に上がるんかい?」
青「上がるかどうかはご理解と努力しだいですね」
経「気を持たせるなよぉ」
青「ではまず、売上の要素は何でしょうか?」
経「お客さんが来て買うからだろう?」
青「売上は客数×平均客単価。経営者の常識です」
経「まぁ、言えばそうだよな。で、それがどうした?」
青「だから、売上を上げるにはお客様を増やし、買物額を増やすことです」
経「待てよ。こんな悪い景気なのに?お客様は増えねぇし、買物だってショボイぜぇ?景気が上がらなきゃ何も解決しねぇよ」
青「解りました。それでは、その景気はどうやって上げるんですか?」
経「アホな。俺たちに景気を上げられる訳がなかろう。景気ってのは天からの授かりものの様なもんだな」
青「じゃ、雨乞いします?」
経「意外と意地悪だな」
青「日本には約5百万人以上の経営者がいます。その内の %以上がご主人のような小規模経営者です」
経「5百万人も居るのか?」
青「その5百万人が景気は他人事って言ってたら、この先どうなるんですかね」
経「え?」
青「日本にある5百万店舗ものマーケットが、他力本願で自助努力をしなければ景気が回復するはずがないですよね。だって、それじゃぁ街がつまらないですよね?商店街に行こうと思わないですよね?どの街にもある代わり映えの無い大型ショッピングセンターぐらいにしか行く場所が無いっていうのが消費者の本音じゃ無いでしょうか?」
経「うーん。お前、やっぱり意地悪な事言うなぁ」
青「お客様の本音です。そこを頑張れば商人だって景気を作る事ができるんです」
経「そうだな。そこを他人事にしていたから今の様な不景気なのかもな」
青「で、計算式に戻ります。売上は?」
経「客数×客単価だろ?」
青「まずは客数です。ご主人、お客様はどこから来ますか?」
経「外からだろ?」
青「だから?」
経「お客様の道だな。広告で知って貰って、誘導看板で案内して、店舗の外観で入りたいと思わせる。だろ」
青「百点満点です。でももうちょっと考えましょう」
経「秘伝・奥義か?」
青「ご主人のお店は飲食店ですよね。では、顧客対象はどんな層ですか?」
経「昔はぜーんぶ。って言ってたけど。俺っちも賢くなったからな。そうさな、家族客に来てもらいたいな」
青「では、家族客に人気のあるお店は」
経「ファミレスとか最近の回転寿司かなぁ」
青「そうですね。子供が喜ぶおもちゃやゲームを取り入れています」
経「でもおもちゃで子供を釣るってどうかと思うよ」
青「それがお客様を集めるコツでもあるんです。それらは家に帰ればすぐに捨ててしまうような玩具です。子供もおもちゃが目当てなのではなくそれを貰うまでのプロセスが楽しいのです」
経「道のりってやつだな」
青「子供だけって訳ではありません。お母さんは夕飯づくりから開放され、手を休められます。お父さんは奥さんの笑顔が見れて価値を感じます」
経「それぞれに価値があるって事か」
青「客数には二通りあります。一つは新規客。これはご主人が仰ったとおり、外から来ます。もう一つはリピーター客。こちらは事業の価値を素直に感じて、再来店する人たちです」
経「価値はリピーターを作るんだな?」
青「その通りです」
経「だんだん解ってきたぞ」
青「で、その価値にも二つあります」
経「また解らなくなるぞ」
青「価値には直接価値と間接価値の二つがあるんです」
経「関節技か?」
青「ご主人のお店で、食事が美味しいのや新鮮だったりするのが直接価値です。それらは値段があります」
経「メニューや商品の事だな?」
青「そうです。専門家が丹精こめて手作りする自慢の商品です」
経「解ってきたぞ・・・」
青「もう一つの価値が値段で表せない間接価値、つまり付加価値です」
経「プライスレスだな」
青「付加価値はサービスだけではありません。お店の雰囲気も付加価値です。たとえばプロポーズにふさわしいおしゃれな空間なら、多少客単価が高くても来る価値があります」
経「非日常もそうだな」
青「そうです。そういう付加価値がお店の価値を決め、商品の値段を決め、客単価を決めるんです」
経「ブランド品とノンブランドの価格差ってやつだな」
青「ご主人だいぶ明るくなって来ましたね」
経「このコーナー7回目だからな。学んでるからな」
青「頼もしいです」
経「で、具体的にはどうするんだい?」
青「@新規客を増やすために積極的に広告をして、店舗外観を綺麗にする事」
経「その場合の綺麗さは経営者の目線では無く、顧客の目線だな」
青「Aリピート客を増やすために商品の品質を高めて他にないサービスでお客様の喜びを探ること」
経「子供も親も喜ばせる」
青「そして最後に、内装や商品の紹介。これは非日常であり、ブランド戦略でもあります。客単価が高くなるも低くなるもここにかかっています」
経「付加価値ってやつだな」
青「そうです。付加価値が無いと価格自体を安くするしかないのです。逆を言えば、安くする以外に手段が思いつかないんです」
経「で、その結果、利益が無くなって廃業か・・・」
青「付加価値が高ければ新規客もリピート客も増えて、つまり、客数が全体的に増えて、更に、客単価が上がれば、売上は確実に上がるんです。お客様が5割増えて客単価が3割増えれば売上は2倍になります」
経「次号も見逃さないぞ」

●2012年4月号掲載

 安売りは何も良くしない やって良い事・悪い事 その1






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

経「いやぁ、付加価値、付加価値だよ。これがあれば利益率も上がる?」
青「お客様が満足して、更にお店の利益、つまり儲けも増えます」
経「安売りばかりがお客様を繋ぎ止める唯一の手段だと思っていたよ」
青「安易な安売りは事業や地域経済を弱めるんです」
経「経済が弱る?なんで?」
青「安売りをすると普通は儲けが減りますよね」
経「普通はそうだな」
青「儲けが沢山あったらご主人はどうします?」
経「そうさなぁ、従業員を増やして、更に良い付加価値を付けるな」
青「儲けがないと?」
経「人は雇えないなぁ」
青「安く売ると、儲けが少ない。儲けがないと、人を雇えない」
経「当たり前だよ」
青「失業率が高くなるのは、安売りするからですよ」
経「そういう関係があるか」
青「仕入れのお肉が半値になったらどうします?」
経「そりゃ嬉しいね」
青「でも、同業他社も半値になりますよね」
経「ウチだけなら良いけど、まぁそうなるだろうなぁ」
青「そうすると値下げ競争になりますよね」
経「うわぁ、聞きたくない」
青「仕入れが下がって本来なら利益が増えるのに、また無理な競争を仕掛けられて増えるどころか利益がどんどん減っていく」
経「やめてくれー」
青「この10年のデフレってそういう仕組みなんです」
経「そうそう、この10年廃業が凄かった」
青「例えば衣類で安売りするためにはどんな環境が必要でしょうか?」
経「そうさなぁ、まずは安く作る環境だろうな」
青「それは国内ですか?」
経「間違いなく海外だな」
青「労働がどんどん外に流れて、日本からお金が出て行って、いくら安いものが日本で売られても、儲かるのはその会社と海外の労働者だけです」
経「安売りって何か慈善事業的な好印象の響きがあるから、ただ単に良い事だって思ってたけど、何かそうでも無いようだな」
青「安く売る。日本全体の売上が下がる。単純に国の消費税収入も減ります」
経「昔は節税ってやっきになったけど、税収がここまで減ると、何とか国家財政を立て直さなきゃって、一国民のおいらでも他人事じゃなくなってるからな」
青「よくお金を回すと言いますが、お金が還流しないと経済は確実に弱ります」
経「お金を使わなければ貯金が増えるって、みなそう思っているよな」
青「年金の取り崩しの問題、社会福祉の問題、災害復興の原動力、これら全て、経済が健康であれば今ほど問題にならない事ばかりです。お金を使わなければ一時的にプールされますが、そもそも経済が弱って、やがてはお金が自分に入る仕組みを破壊しかねないのです」
経「目先の事しか見えないって事か」
青「話を戻します。インパクトのある安売りをすれば、確かにお客様は集まります。ですが、その人たちはその後のリピーターにはならない人たちです」
経「本当?」
青「安売りになびく人は根本的に店や品物を愛しません。安売りと言うイベントを愛しているんです」
経「そういや、安売りだといつもと違う顔が増えるな」
青「リピートしますか?」
経「それっきりだ」
青「お店が出血大サービスをする。本来その恩恵に預かった人たちはその後、その店の常連になる。その為の赤字覚悟のイベントなのに、期待はずれになる」
経「世の中も悪いよな。安売りをTVでクローズアップしすぎだし、あんまり酷い安売りを見せられると真っ当な商売をする気が失せるよなぁ」
青「全ては『易きに流れる』です。安易な方へ安易な方へ流れて行って、後戻り出来ない大滝の前で気がつくんですよね」
経「俺たちは何を売っているか?って事か」
青「そうです。皆さんは価値を売っているんです。たとえば酒屋さんはお客様の代わりに世界中から良いお酒を集めて、信頼の置ける商品をお届けする価値を売っているんです。誰でも出来るのは商売ではありません。商人は、知識、良心、信頼、努力、そして真心をお客様にお届けしているんです」
経「誰にでも出来る事じゃない。その辺のシステム化された商売に負けてる場合じゃ無いって事だ」
青「ご主人、凄いやる気になってるじゃないですか」
経「俺もおだてりゃ木に登るってやつだよ」
青「高く売れば良い訳ではありません。安く売れば良い訳でもありません。大事なことは、お客様が支払われた以上の対価=価値をお渡し出来たか?って事です。価値が小さければリピートしませんし、価値が充分ならお客様はその事業を愛して下さるのです」
経「お前、神父さんか?」
青「さて来月も」
経「お楽しみに…ってか」

●2012年5月号掲載

 安売りは何も良くしない やって良い事・悪い事 その2






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

経「さぁ先月のおさらい」
青「安売りの功罪ですね。安売りは一見買い手にとても得なように見えるけど、それによって日本経済が弱り、雇用が減少し、利益が減り、税収も減り、弱いものへの福祉も先細り、回りまわって得なことは一個も無いと言うことですね」
経「おいおい、そんなに凄かったっけ?」
青「整理すると凄いですね。でも、現実ですからね」
経「今のまま安売りばかりが注目されるとお客さんは減る一方だよ。付加価値を付けるって理想は素晴らしいけど、現実は厳しいぜ」
青「そうです。いざやるとなると難しいですね。でも不可能ではありません。しっかり作れば付加価値は出来ます」
経「本当か?」
青「付加価値とは、解りやすくいえばブランドです」
経「それがおいらのような小さな店で作れるのか?」
青「もちろん。大きな事業で一からブランドを構築するのは大仕事ですが、小さな店なら小さいなりに、それ程手間をかけないやり方もあります」
経「そうか、出来るのか」
青「但し大前提として、本当に質の良い商品やサービスがある事が条件です」
経「そうだよな。宣伝や雰囲気づくりばかり良くてお客さんが入っても、中身が悪けりゃ怒るわなぁ」
青「絶対リピートしません」
経「了解、商品サービスが大前提で…どうする?」
青「まず、お客様の対象=ターゲットを明確にします」
経「全部…じゃ駄目なの?」
青「それじゃイメージがまとまりません。たとえ全部のお客様に利用されるとしても、代表的なお客様像は定める必要があります」
経「そうさなぁ、うちなら30代の家族かな」
青「そうです。そういうターゲットです」
経「家族…で、良いのか?」
青「大丈夫です。若い家族で買物や食事の決定権は誰にあるのでしょうか?」
経「本当は旦那さんって言いたいんだが、今はどこも女性が強いから、奥さん」
青「正解です。例外もありますが、ほぼそれで間違いありません」
経「ちょっと悲しいぞ」
青「要はお財布の主権者です。その人のセンスに合わせて事業を飾るんです」
経「おお、デザインだのブランドだのって世界だな?」
青「店を選ぶ人、お金を払う人の嗜好に合わせて付加価値を追求すると成功しやすいんですよ」
経「人の嗜好って解るの?」
青「ええ、これからが肝心な所ですよ」
経「それは来月ってか?」

●2012年6月号掲載

 安売りは何も良くしない やって良い事・悪い事 その3






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

経「さぁ今月は凄いぞ。人の心を読むの巻だぞ」
青「一人ひとりは違いますから、飽くまで年齢・性別からの平均値です」
経「例えば先月の30代の夫婦家族は、財布を握る奥さん主導だったよね?」
青「そうです。30代から40代の女性はテレビ視聴率でも番組価値に影響するとされている最も重要なターゲット層です」
経「へー、偶然30代って言ったけど、その層が重要なターゲット層だと?」
青「ええ、女性の30代40代は飲食、旅行、ファッション、住居など、最も消費活動を行う層とされてます」
経「知らなかったなぁ、今度注意して見てみよう」
青「この層の女性が最も嫌うのが不潔さです」
経「不潔は誰もが嫌いだよ」
青「レベルが違います。たとえば暖簾の手垢汚れ」
経「それ落ちないんだよ」
青「椅子やテーブルのキズや塗装のはがれ」
経「うちにもあるなぁ」
青「トイレの床のちょっとした汚れ」
経「ドキッ」
青「レジ周りに帳簿があったり、封筒が乱雑に挟んであったり」
経「そこまで見るの?」
青「だからハードルが高いんです。旦那さんの知っているお店でその層に人気があるお店があったら覗いて見てください。きっとその辺りが綺麗ですよ」
経「そうだな。この目で確かめてみよう」
青「また、女性目線の『綺麗』と男性目線の『綺麗』は違います」
経「えっ本当?」
青「洋風の建物で入口に黒と金の装飾があるのはどう思いますか?」
経「黒は締まるし、金は良いよな。お金持ちっぽくて」
青「多くの女性は嫌います。しかし、一緒に深緑や赤が使われていると、イギリス風で印象が良くなります」
経「ふーん、そうかい」
青「文字にも好き嫌いがあります。多くの女性は角ゴシックよりも丸ゴシックを好みます。江戸文字は多くが敬遠されます。黒と金のイメージと同じ理由です」
経「文字にも好き嫌いがあるのか…」
青「江戸文字を使いたいときは太目の楷書体を使うといいかもしれません。そもそも江戸文字や角ゴシックのような太い・力強いと言う印象が敬遠されているようです」
経「男らしさが裏目にか」
青「強いよりも優しい、太いよりもスマート、濃いよりも薄い、って言うのが平均的な嗜好のようです」
経「ポップ文字はどう?」
青「ポップ文字はもともとスーパーの安売りアピール用の文字ですし、最近ではPTA会報誌など、プロでない方々が作るデザインに使用され、素人とか安売りの代名詞になっています」
経「プロは使うなって事?」
青「事業の専門性や付加価値を訴える場合はそうですね。大手企業の名刺を見るとほぼ99%ポップ文字は使われていません。印象を尊重する一流企業は、ポップ文字の弱点を認識してます」
経「安っぽく感じられる=客単価が下がる。って事か」
青「そうです。事業はターゲット層が感じる価値を上手く訴求して、イタズラに価値を下げないように注意しなければなりません」
経「よりよい商品の付加価値を尊重して訴え、的確な価格でご利用いただくって訳だな」
青「百点満点です。その価値がマーケットに広まれば、雇用は増え、所得が上がり、嫌なデフレとサヨナラできるんです」
経「下手な安売りに傾かないためにも、ターゲットの嗜好をしっかりと掴むってことですな」

●2012年7月号掲載

 地域事業者のすべき事 価値を伝える事 その1






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

経「今まで色々教わってきたけど、さて、我々西湘地区の経営者は、具体的に何をすればいいのかなぁ?」
青「そうです。そこなんです。理論やルールは解っていても実際に何をするのか?と言う具体的な手法まで理解して動き、結果を出すまでをそつ無くやる事です。この結果を出す事がゴールじゃなくスタートですから」
経「結果がスタート?」
青「そうです。何のために結果を出すのか?それは理論や戦略が正しいか?を確かめるためです。思い通りの結果が得られない場合は手段や戦略を改善しなければなりません。改革・改善というのは、考える→実行する→評価する→改善点を探る→考える→これの繰り返しを延々と行うことです。つまり、最初の結果はこれらの行動のスタート地点なのです」
経「PDCAってやつか?」
青「良くご存知で、プラン(計画)・ドゥ(実行)・チェック(評価)・アクション(是正)の事です」
経「青会の勉強会で習った事があったからね」
青「さて、何をすべきか?まずは大きな目的を考えるべきです」
経「大きな目的?」
青「事業はそれぞれ。売るものが違えば手法が違います。が、大きく見れば大事な共通項があるんです」
経「皆に通じる共通項?」
青「たとえば西湘地区には大型店舗が沢山ありますし、また、増えています」
経「そうそう、最近また増えてきた。これも頭痛の種」
青「大型店と小規模店には決定的な違いがあります」
経「カネ?資本?」
青「人です」
経「人?」
青「45歳から60歳ぐらいのフォークソング世代と言われる年代の方なら解ると思うのですが、昔の町中には小さなお店が沢山ありました。ジーンズ店、レコードショップ、スポーツ専門店、喫茶店、レストランもそうです」
経「そうそう、あったあった。っていうか、そういう店しか無かったからな」
青「今は大型店化して、店の数もめっきり減りましたけど、昔はそれぞれのテリトリーを尊重して互いに共存していました」
経「バブルの前の時代だね」
青「その頃は街が面白かったですね」
経「そうだな。バブルのような景気のよさは無かった。おいらは東京で学生だったけど、小さなアパートでトイレが共同なんて当たり前だった。今の子達は嫌がるだろうけど、そういう質素さが普通だった」
青「問題は人です」
経「そうそう、人」
青「僕たちはそういう小さなお店の人たちにいろんな価値を教えてもらって大人になっていきました」
経「……そういえば、ジーンズ屋のお兄ちゃんや喫茶店のマスターは人生の先生だった。教えてもらうことが本当に楽しかった」
青「時計屋のおじさんに貴金属の希少さ、時計技術の奥の深さを教えてもらいました」
経「昔の街のお店には沢山の『暖かい会話』があった」
青「様々な価値の基準となる知識や情報が人から人へ伝えられて、物に対する価値観の軸がしっかりと構築されていたんですね」
経「だから、今の若者よりコダワる人が圧倒的に多いのか?」
青「コダワる情報軸、判断軸が伝えられない今は、コダワる人が少ない。だから価値のある商品が売れにくいんです」
経「そうか…、それで良い物が売れなくなったのか…」
青「それでよいのでしょうか?文化や価値観が軽んじられる世の中が、そもそも面白いのでしょうか?コダワれない世の中なんて、つまらないに決まっています。今の消費量が少ないのは、決して景気の悪さだけでなく、マーケットのつまらなさも大きな要因となっているのです」
経「マーケットが面白くないってのは俺たちにも責任があるよな。なんせ、楽しようとばかり思っちゃったからな」
青「マーケットが面白くない程、人々は面白いものを無意識に探しています。買物ってそもそも面白いものですからね」
経「じゃ、あれか?テレビで紹介されると凄い人数がバッと来て、2か月もしないうちにサッと引いちゃうのも、価値を知らないからか?」
青「そうです。自らが探すとか判断するとかの力が乏しい分、人に教えてもらう、本に出ていたなどの基準で価値を判断しています。テレビに出ると良かろうが悪かろうが関係なく、とりあえず行ってみようと言うのが今の傾向です」

●2012年8月号掲載
 
 地域事業者のすべき事 価値を伝える事 その2






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

経「そうかぁ、買物の面白みが前と比べて無くなったのか。確かに何処の大型店舗に行っても、似たような店ばかりで、最近つまらないって感じてたよ」
青「大きな事業って、せいぜい百に満たないです。でも個人店なら、日本に数百万店もあります」
経「数百万?って、そんなにあるの?」
青「以前は八百万はあったんですけど、今は半減です。でも、それだけのお店が皆個性的になったらどうでしょうか?」
経「どうでしょうって、そりゃ面白いに決まってるよ」
青「旦那さんのお店がある商店街に全部お店が埋まって…・」
経「うんうん…・」
青「それぞれが魅力的な店舗で…・」
経「おぉー、いいねぇ」
青「で、昔のように、人生を教えてくれる兄貴分、姉貴分が居たら?」
経「おいらの姉貴分じゃ年取り過ぎだけど、若い人たちには確かに素晴らしい環境だよな」
青「今の大型店やFCの店には出来ないこと。それが人付き合いなんです」
経「人付き合い?」
青「昔流の接客です」
経「そうだよな、ハンバーガー屋さんのお姉さんがお客と友達になったなんて話は聞かねぇからな」
青「FCや大型店のスタッフは利益優先で教育費を削るためにマニュアルを導入しています。これは個性を無くすも同然です。むしろ、個人店が行っている人付き合いとは、欧米の超高級ブランドショップが実践している接客と同じなんです。つまり、優秀な人材を育てて、その人間の個性でお客様の心をつかむんです」
経「優秀ってのがこそばゆいけど…。そうだよ個性だよな」
青「旦那さんの商店街には色んなお店があって、いろんな店員さんがいる。これってどうでしょう?」
経「魅力的だよ。とっても魅力的に聞こえる」
青「スタッフの個性で人気を得ている事業って、皆成功していますが、数は少ないです。人を育てるってことはお客様でもスタッフでも一朝一夕にいくものじゃないですからね」
経「人を育てるか、随分聞いていない言葉だよな」
青「家の中で、お嫁さんがお姑さんにあれこれ習うように、愛する子供が将来困らないように教育するように、スタッフを育てる。お客様を育てることも、心をこめて、愛情をこめて、同じ人間を育てるんですから」
経「その愛情が、大型店やFCとの違いになるんだね」
青「そう言うことです。大型店やFCには、それぞれ個人店には真似が出来ない長所があります。ですが、個人店も負けてばかりじゃありません。大型店には真似できない個性と言う宝があるんです。バラエティに富んだ愛情があるんです」
経「バラエティかよ。なんかこそばゆいけど、確かに個性、独創性なら負けない自信がある」
青「そうです。自信を持たなきゃいけません。どんなことがあっても、個人店が消え去ってはいけないんです。街から個人店が消え去って、大型チェーン店ばかりになったらって想像して見てください」
経「うわーっ、想像すら嫌だね。きっと、ものすごくつまらない街中になるんだろうな」
青「個性が無い、人の温もりが伝わらない。それじゃインターネット上のショッピングサイトと同じじゃありませんか。買物が単なる動作になって、街歩きをしたり、好きなお店を探すって楽しさが消えていくようですね」
経「その、お客さんが感じる『楽しさ』ってやつも良く言う『価値』なのか?」
青「勿論です。これも重要な価値です。お客様がお店にリピートする大きな要素の『楽しさ』です。これが無いところは『安さ』と言う直接価値しかありません」
経「直接価値?」
青「ハンバーガー88円とか、の商品価格の安さ、何割引きと言う割引額、幾らのキャッシュバックと言う返金額。これらは全て、定められた数に換算できる直接価値といいます。数字があるから理解しやすいんですね」
経「じゃ、今までの『楽しさ』とか『愛情』とか『兄貴的』とかの数字にならない価値は何ていうのさ?」
青「それを『付加価値』といいます。付加価値とは目に見えない、数字に表れない『ぼやっ』とした価値です。『楽しさ』『わくわく感』『嗜好』など、感じ方は人それぞれですが、確実にお客様に作用します」
経「満足感?」
青「そうです。結果的にお客様に『満足感』と言う数値に現れない価値を与える作用です。直接ではなく、付加される価値なので付加価値と言います」
青「うーん、難しいなぁ」
経「そうですね。でも大企業とか一流ブランドとかはこの付加価値を大変重視しているんです」
青「なんか、個人経営復活の奥義が垣間見えたような気がしてきたぞ」
青「奥義で正解です」
経「で、今月はここまでって言うんじゃないだろうな」
青「正解でーす」

●2012年9月号掲載

 価値は色んな場所にある〜目に見えない価値 その1〜






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

経「付加価値かぁ。目に見えないけど売上や粗利益率に確実に影響するモノかぁ。景気の良い時には全然気にしなかったけど、この不景気の時代には、ずっしり影響するようだなぁ」
青「バブルの前、飲食店の3Fってありました」
経「3つのFか…。Fねぇ。…さっぱり解らん」
青「一つ目はフィーリング。お客様の感性や嗜好に合っているかと言うF」
経「FEELINGね。大事だね。しかも、経営者目線じゃ無くお客様目線でね」
青「2番目がフィメール。つまり女性って意味です」
経「女性?どういうこと?」
青「スタッフの魅力とも言えます。男性客にとっての女性スタッフ。女性客にとっての男性スタッフ。つまり、擬似恋愛的なものです。当時は男性優位だったから、FEMALE(女性)のFが使われたのですね」
経「つまりはスタッフの接客の心地よさ的な部分だな」
青「その程度ですね。でもとても効果があります」
経「最後のFは?」
青「フィクションのFです。普段には無いこと、非日常的な事と言う意味です」
経「前にも学んだよ。非日常と言う環境がお財布の紐を緩めるってやつ」
青「そうです。とても大事な付加価値です」
経「例えば?」
青「例えば節約旅行に行くとします。事前に調べ上げて安くて美味しい店を歩く旅だとします」
経「無駄遣いしない旅ね」
青「でも、お金はあるだけ使っちゃいます」
経「うん。いつの間にか使っちゃうんだよな」
青「使っちゃうのは予想外の事に対してです」
経「予想外?」
青「調べたことは解ってますから予想内。あとは旨いか良かったかという評価だけですが、本に載っていなかった現地で見つけた魅力的な土産や食事やアトラクション。旅気分も重なって、お金があれば試してみたくなるのが人間の常です」
経「で、使っちゃうのか?」
青「旅という非日常性。予想外で興味を惹く非日常性。つまり、いつもと違うものに対する興味や憧れが衝動的な購買や利用に繋がるんです」
経「FICTION=物語。つまり、現実の日常ではなく、非現実のドラマのような世界って事だな?」
青「そうです。この3つのFが飲食業に売上促進、集客、高利益をもたらすと言われていました」
経「他には?」
青「3Sというのもありました。新規店舗を出す時の条件です。つまり、セグメンテーション(市場調査)、スピード(実行速度)、センス(感性)です」
経「ここでも感性は重要なんだなぁ」
青「目に見える商品ばかりじゃありません。お店やスタッフの魅力、立地の優位性、非日常的な力など、目に見えない価値の方が影響するんですね」
経「来月へ続いてもらおう」

●2012年10月号掲載
 

 価値は色んな場所にある〜目に見えない価値 その2〜






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

経「お客様の目線。価値観かぁ。何度も出てくる課題だけど、これは重要だなぁ」
青「お客様の目線でご主人のお店を利用するまでの過程をたどって見ましょうか」
経「プロセスって奴だな」
青「その前に、大事なこと。お店のお客様は2通りいらっしゃいます。一つは常連客、もう一つは新規客です」
経「いやぁ、最近は新規客って、そうだな、この15年ぐらい殆ど来なくなったな」
青「事業は常に新規客を誘わないと売上を伸ばすどころか維持さえもできません」
経「売上も下がってるよ」
青「今回の誘客のプロセスは、新規客に的を絞ってご説明します」
経「両方って駄目なのか?」
青「常連客と新規客はお店に対する目線が同じではないので、今回はご主人が苦手な新規客に絞ります」
経「苦手ね。間違いない」
青「新規客は、まず、ご主人のお店を知りません」
経「え?50年もの歴史があるうちを知らないのか?」
青「多くの経営者が錯覚するのがお店の認知度です。実際は事業主が思う程の認知はありません」
経「え?本当?」
青「だから最初にすべきことは認知度を上げることなのです」
経「チラシとかの宣伝か?」
青「そうです。とても大事な要素です」
経「おれっちみたいな小さなお店が宣伝するのか?」
青「ご主人、宣伝を捨て金とか損だとか思ってるでしょう?でも宣伝は本来利益を出すための行為である事を忘れないで下さい」
経「ちょっと、宣伝でどうやって利益を出すのさ?」
青「ご主人のお店の粗利益率は7割ぐらいですよね」
経「そうだよ」
青「例えば宣伝に10万円かけたら、それを回収するためには幾らの売上増が必要ですか?」
経「粗利益でまかなうから14万円ぐらいかなぁ」
青「それを月の営業日で割ってみてください」
経「25日だから、一日五千六百円だね」
青「それを平均客単価で割って下さい」
経「エーっと、一人平均で千五百円だから、3.7人か」
青「どうです?1日4人のお客様が増えれば、年間で120万円もの宣伝が可能です」
経「最初から増えるのかよ」
青「仰るとおり、最初から増えるわけがありません。最初に言ったお客様目線で見ると、今まで何も知らなかったお店の広告を1回だけ見たとして、お客さんはお店に来ますか?」
経「ユニなんとかとかの新店が出来るとダーっと入るじゃない?」
青「それは既に全国的に認知されているからです。宣伝は来させるだけでなく認知させることも立派な戦略なのです」
経「でも、来なけりゃ損になっちまう」
青「お客様にまずは認知させる。そして継続して情報を提供して、来店する気になってもらうんです」
経「順番があるんだな?来月に続くってことだな」

●2012年11月号掲載
 

 価値は色んな場所にある〜目に見えない価値 その3〜






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

経「いやいやぁ、君が言うように、しっかりと魅力的な広告宣伝したら、新規客が入ってきたよぉ。何年ぶりだろうか?」
青「広告せずに新規客をつかむ方法もあるんですよ」
経「えっ、先に言えよ」
青「条件がありますけどね。通りの多い道に面している場合ですね」
経「俺っちがそうだよ」
青「ご心配なく、別に損じゃありません。相乗効果でもっと新規客が入ります」
経「えっ、えっ、もったいぶらないで早く教えてよ」
青「前回は広告でお店を認知してもらって新規客が増えました。今回はお店の前を通った人に『入りたい』って思わせる店構えについて勉強しましょう」
経「はーい。って子供かよ」
青「人通りの多いところに新しいお店が出来ると注目されますが、昔ながらのお店は日常の風景なので特に注目されません。お店が町の景色に馴染んじゃっているんですね」
経「馴染むと悪いのか?」
青「要するに目立たないんです。目立たないってことは新規客にも気づかれないってことです。つまり、新規客は入りません」
経「んー。理論的だねぇ」
青「ですが、急に改装したりすると目立ちます。あと、目立たせようとする努力がやはり目立つのです」
経「改装はわかるけど、努力ってなんだ?」
青「鮮やかさですね。新鮮さというか…」
経「なんだそりゃ?」
青「赤いお店があるとします。最初は綺麗な赤でしたが、塗装は必ず日光で退色します。鮮やかだった赤が色あせて鮮やかさが失われると…」
経「目立たないわな」
青「掃除が行き届いて、とても綺麗な店先が、手入れを怠って、周囲の道の汚れと同じようになったら…」
経「それも目立たない」
青「店先の綺麗さ、鮮やかさは店の元気度を表しています。だから、色あせたり少しでも汚れたりしたらお客様の目に止まらなくなってあたかも無い店と同じ印象になってしまいます」
経「店の元気さが新規客を呼ぶのか…」
青「特に目に見ないけれども、この店先の元気が、お客様をひきつける価値のひとつでなんです」
経「そうか、広告もそうだけど、お店の綺麗さも誘客に繋がるんだな」
青「あとは看板です。日で焼けて黒ずんだ看板や壊れてる欠けているなんて、お客様を遠避ける原因です」
経「毎日見てるから気づかないけど、新規客は初めて見る看板だものなぁ」
青「そうです、毎日見てるから気づかない汚れや破損、これらが、初めて見る人には経営者のだらしなさとして映ってしまうのですね」
経「そう言えば昔は良く掃除してたよ。亡くなった母なんかはいつもハタキであちこちパタパタしてたものなぁ。いまじゃ見ない景色だけど昔の商人はしっかり掃除してたんだよな」
青「今からでも遅くないですよ」
経「お宅が言うように、ちょっとずつ怠けちゃっていたのかもしれないなぁ」
青「店の外部でまだポイントがあるんですが…」
経「来月に続くんだろ?」

●2012年12月号掲載
 

 価値は色んな場所にある〜目に見えない価値 その4〜






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

経「いやー、凄いよ。店の外だね。綺麗にしたらびっくり。知らないお客さんが沢山入って来るんだよ」
青「ご主人のお店は看板も新しくしましたし、何が売られているのか、入る前のお客様にしっかり伝わるように出来ているからですよ」
経「それにしても、先月から君の言うことを守っていたら売上が2割も増えたよ。でもね…」
青「でも、リピートしないんですよね」
経「わかる?リピートしない原因が解ってるの?」
青「順番ですからね。まずは遠いお客様へ広告で知らせて、近づいたお客様や通りがかりのお客様へ店の外観で訴求して、で、次はお店の中の番ですね」
経「以前に教えてもらったように日常性を出さないように、洗濯物も置いてないし、孫のカバンもしっかり片付けているんだけどな」
青「伝票もお客様から見えない場所に片付けたし、百円ショップのカラーケースも片付けました。片付けるのは合格です」
経「片付け以外?か?」
青「そうです。経営者側はなかなか気づかないけど、新規のお客様は絶対気付くことです」
経「もったいぶるなって」
青「掃除ですね」
経「またかよ。何処まで掃除させるんだよ。掃除屋さんにでもならせる気か?」
青「長年の汚れです。一度徹底的に掃除すれば、その後は定期的に維持する程度で良いのですが。一度プロの掃除屋さんを頼むのも良い解決策です」
経「で、これ以上どこを掃除するんか?」
青「まず、ドアの汚れです。白いドアの手垢、サッシの黒ずみ、換気扇の汚れ、冷暖房機器の吹き出し口の周辺、棚の汚れ、机や椅子の汚れや塗装剥がれ、電話の受話器の手垢、床の汚れやタイルマットの欠けや黒ずみ…まだ言いますか?」
経「本当だ。あるある。確かに汚れているよ。毎日見てるから気付かなかったけど、こりゃお客様は嫌だろうな。俺だって、よそのお店に入って、汚れていたら目に付くもんな」
青「特にトイレです。便器は勿論、ゴミ箱の中、蛇口の水垢、床や壁の汚れ、そして臭いですね」
経「臭いか?それはいつも使ってる方は解りにくいな」
青「臭いはトイレばかりじゃありません。商売によってそれぞれ良い臭い、良くない臭いがあります。例えば串焼き屋さんのロースターの下には肉の脂が炭のように固まっています。これが嫌な臭いを生むんです」
経「へぇ、いつも行ってる焼き鳥屋もそうかもな、常連には解らないけど一見さんには解るんだろうなぁ」
青「汚れ・劣化・臭い。この3つに気を付けて掃除すればリピートしない理由が大きく無くなります」
経「そうかそうか、日常性やら非日常性ばかり気になってたけど、商売人にとって一番基本の掃除や清潔さの維持がおろそかになってたかも知れないなぁ」
青「そうですね。昔の人は余りうるさくなかったですが、若い人たちは綺麗な環境で育ってますから」
経「時代が変わればお店も良い方へ変えないといけないんだね」
青「そうですね。少しずつでも変えて行きましょう」
経「で、来月は?」
青「更にお店の中です…」

●2013年1月号掲載
 

 価値は色んな場所にある〜目に見えない価値 その5〜






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

経「いやはや、先月号の掃除。徹底的に綺麗にしたら、さらに新しいお客様が増えたよ」
青「それはそれは、これで外観は文句無いですね」
経「そうそう、今月号はお店の中だっけね。認知や外観が新規客を入れる要素だとしたら、お店の中ってどんな要素になんの?」
青「はい、良いとこ聞きますね。よっ、優等生!」
経「新年から褒めすぎ」
青「お店の中は客単価や商品価格に影響するとても重要なポイントなんです」
経「ってことは、認知と外観で客数だから、それに客単価をかけ算すれば、売上になるって事だな」
青「その通りです。もっと言えば商品単価の操作=粗利益率の操作も出来るんです」
経「エー。粗利益率の操作だと?この不景気で安売りしか売れないと思ってたところに、何と言う大胆な値上げの話題かよ」
青「ご主人、消費者の多くは、決して安いものばかりを欲しがってる訳じゃありません」
経「じゃ、何を求めてる?」
青「消費者は、満足いく商品を求めているのです。これはいつの世も普遍の定義です」
経「本当かよ?」
青「買った金額以上の価値感さえ得られれば、必ず満足して下さいます」
経「どういうこと?」
青「例えばいつもの買物の時間にスーパーで買う『買い置き』のカップラーメンと、深夜お腹がすいて家に何も無くて深夜営業している店で見つけた『現在の空腹を満たす』カップラーメン、どちらが価値がありますか?」
経「そりゃ深夜だよ」
青「買い置き用のは105円でも高いと感じるけど、深夜の方は135円でも安いと思いませんか」
経「うーん、イマイチ」
青「では、綺麗なお姉さんがサービスしてくれるリッター145円のガソリンスタンドと、同級生の親父しかいない135円のセルフスタンド。どちらに行きますか?」
経「ハイ。お姉さんのほう」
青「答え、早いです」
経「まぁこれはおいらの主観だからね」
青「安いということに価値を感じる方もいればそうでない方もいます。条件や環境が同じなら安いほうが良いに決まっています」
経「解ったぞ。つまり、その条件とか環境を特化することを、お店の内部で実現するってことなんだな」
青「そうです。価値は商品ばかりじゃありません。お店の内装や装飾、雰囲気づくりでガツンと満足を感じていただく。それがとっても大事なことなんです」
経「お店の内部って内装ばかりじゃ無くて、テーブルや椅子の質感、メニューやポップの品質、そしてスタッフの質も雰囲気の一部」
青「流石、ご存知ですね」
経「理屈は解っているんだけど実際にどうするの?」
青「紙面の関係から来月につづく…ですね」

●2013年2月号掲載
 

 価値は色んな場所にある〜目に見えない価値 その6〜






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

経「じゃ早速本題に。例えば食堂で店内の雰囲気がメニュー価格に影響するってのをもう少し詳しく頼むよ」
青「お客様は初めてのお店で勝手に空いている席に座って良いものか、良識あるお客さんならそう思います」
経「ふんふん」
青「そこにスマートな接客で席に誘導すれば得点」
経「お、加点減点制だね」
青「すかさず、お絞り、お茶、メニューが出て、人気メニューなどの紹介があれば更に得点」
経「スムーズだな」
青「笑顔でまた得点。あと注文後、待たせ過ぎなければ更に得点」
経「美味しければ更に得点。これは自信があるよ」
青「サービスばかりじゃありません。例えば椅子がすわり心地良ければ得点。テーブルが雰囲気に合っていて清潔なら得点。内装がおよそ非日常で何らかのテーマが感じられれば得点」
経「内装に来たね」
青「漫画じゃなくて内装やお店のテーマに沿った専門誌などが置かれていれば得点。スタッフのファッションが良ければさらに加点」
経「つまり、加点が積み重なればお客様は価値を感じて安売りじゃない品でも満足感を得る。だな」
青「さすがです」
経「更に、加点の逆をすれば減点。その場合は安売りをせざるを得ない」
青「大手には資本があり安く仕入れる事が出来ますが個人事業のような独特なサービスは表現できません」
経「俺たち小回りの利く小規模事業はこまめな価値で利益を得るって事だな」
青「模範解答。で来月へ」

●2013年3月号掲載
 

 お客様は神様ですが…〜事業経営と利益 その1〜






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

経「店がどう構えるか?ってのは随分解かったよ。でもお客さんの安売り好きも一層酷くなって来たよな」
青「はい。で、今月からはお客様について学びます」
経「とうとう来たね」
青「お店側は一生懸命努力し、お客様のための環境づくりに励みました」
経「励んだ励んだ」
青「価値は充分ありますね」
経「充分すぎるほどあるよ」
青「問題はその価値をお客様が理解してくれるかってところですよね」
経「そうそう。それが心配」
青「実は、お客様も成長しなければならないんです」
経「おうおう、突っ込むね」
青「戦後からバブル以前まで、経済は急成長しましたが、日本人の物に対する価値観は、階段を上がる如く着実に成長して来ました」
経「てぇと?」
青「本物を見抜く目と本物の価値を感じる力です」
経「今は弱いってか?」
青「長いデフレで無駄遣いをしなくなったまでは良いのですが、今はそれを通り越して『安ければ』主義が蔓延しています」
経「どこもかしこもね」
青「利益を無くして商売して事業は存続しません。小さな事業は利益を削るために経費や労働を削ります」
経「そうでもしなけりゃ安売りに対抗できないからな」
青「それで利益が減り働き手が減り、巷は更に景気が悪くなります」
経「デフレスパイラルだな」
青「大手が盛んに普段高いものを安く売っています」
経「ステーキとか寿司とか」
青「千円切るステーキって僕らが小さい頃に憧れたステーキでしょうか?回転寿司の『大カレイのエンガワ』が100円で、何がお得なのでしょうか?」
経「エンガワはヒラメだからこそ価値があるのになぁ」
青「安ステーキも部位が違ったり酷い所は内臓を整形した肉をステーキとして出しています」
経「名前は知っていてもそれが本物かどうかを見抜けないって事か」
青「小規模事業は誤魔化せないから、正直だから、利益を下げます。大手は価値を落としてもしっかり利益を取る。経営学からいえば正当かもしれませんが、価値は正しく伝わってません」
経「正直者が馬鹿を見るか」
青「本来事業者は専門家としてお客様に本物を売って信頼を得ていました。今はお客様が知らないことを逆手に取った事業が行われています」
経「おお、来月号が面白くなりそうだぞ」

●2013年4月号掲載
 

 お客様は神様ですが…〜事業経営と利益 その2〜






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

経「先月号の『お客様の知らない価値』の続きだな」
青「価値を知るために、約33年前の1980年前後を振り返ってみましょう」
経「オリンピックも万博も終わって高度経済も陰りが見えた頃に何があったっけ」
青「所得が順調に上がって日本人の多くが豊かさや安定感を感じ始めた頃です」
経「そうか、高度経済で頑張った手ごたえを感じられた頃だよな」
青「例えばいきつけのバーで、ホワイト・角瓶ってランクがあり、いつかはオールド(国産ウィスキーの名称)っていわれた頃です」
経「あったあった」
青「バブル前の価値観の上昇は仲間社会の情報交換から始まってます」
経「情報交換?」
青「一つには雑誌です。当時の平凡パンチはアイビーファッションを、ポパイはカジュアルと言うアメリカ文化を教えてくれました」
経「VANとかKENTとかおしゃれの入口だったな」
青「そうです。みゆき族とかの一部ではなく日本人の多くがおしゃれをし始めた頃です」
経「カウボーイブーツとかロンドンブーツとかも流行ったよな」
青「車もスーパーカーとかが人気があって国産車にも若者が好むラインナップが売られていました」
経「ゼットとかレビンとか」
青「そして、価値が表に出始めたのが、日本酒ブームです」
経「あった。越の寒梅とか」
青「最初はレモンハートと言う漫画から始まりました」
経「バーを舞台にしたお酒へのこだわりだったね」
青「あれで日本中の隠れた銘酒が表舞台に出て、日本の日本酒消費量が爆発的に伸びたんです」
経「日本酒ばかりか酒なら何でも流行ったよな」
青「ドイツワインの流行で日本にワインブームが到来しました。ドイツの後はボジョレーを皮切りにフランスワインのブームが来ましたね。あと今のブームとは違う焼酎のブームもありました」
経「吉四六とか、いいちことかだね。チューハイもこの頃からだったような」
青「日本人の多くがコダワることに喜びを覚え始めた頃です」
経「こだわる事が価値感に繋がるの?」
青「勿論です。自分が良いと感じるものに価値を感じて消費行動に入るのですが、そもそも、良いか悪いかの判断軸を育てるには食でも遊びでも自分流の『こだわり』を持つことが大事なんです」
経「今は安けりゃ何でも良いって感じだけど」
青「食べ放題的な食事は満腹感はあってもそれほど良い素材があるわけじゃありません。良い素材を使えば二千円や三千円じゃ収まりませんからね」
経「要は今が大手の独断場だけど、お客さんがこだわり始めれば小規模事業にも昔のような繁栄がくるってことか?」
青「こだわり、価値観はお店の人が提供するものです。つまり、お客さまを育てる事なんです」
経「楽をしちゃ利益は出ない。価値を作るなら俺たちが学ぶことから始まるって事だな」
青「正解です。では次号へ」

●2013年5月号掲載
 

 お客様は神様ですが…〜事業経営と利益 その3〜






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

青「さて、それでは価値をどのように操るかをお教えしましょう」
経「具体的にお願いね」
青「まず、お客様を誤魔化さないことです。宣伝文句でも商品表示でも」
経「ひと昔前の牛肉偽装や古米流通もそうだね。アメリカで買った観光土産がアジア産ってのも酷いね」
青「そうですね。ほかには、安く誘っておいて結局高くつく誘客手法もいけません」
経「気をつけなきゃならないマーケットだとお客さんの購買意欲も下がるからね」
青「まずは信頼され安心して買物ができるマーケットをつくることです」
経「まずは安心できること」
青「次に適正価格です」
経「安売りじゃないんだな」
青「安売りには二つの悪いことがあります」
経「二つの悪いこと?」
青「一つには商品の悪さです。安売りに見えて、実はもともと安いものを売っているパターン」
経「ひと昔前の安かろう悪かろうだな」
青「もう一つは過度な安売りによる失業率のアップ」
経「大手の安売り服チェーンなんか中国生産だからね。日本から労働機会が失われて、でも会社は安く売ってもしっかり儲かる仕組み」
青「どれもこれも、お金さえ儲けられれば良いと言う考え方からきています」
経「昔のドラマや映画なら悪い奴の考え方だったね」
青「倫理観のハードルが下がってるんですね」
経「安売りを追求すればするほどマーケットはシビアになって、ゆとりや安心感からかけ離れていくんだね」
青「そうですね。最近ではアベノミクスもあって高価なものが売れる傾向にあります。二極化といえばそれまでですが、価値の高いほうは有意義な価値の追求が行われていますし、安売りのほうは益々マーケットが厳しくなっています」
経「たしかに。長いデフレの中で治安は本当に悪くなった。犯罪者や倫理を護らない人が増えた事は事実」
青「ですが、逆手を取れば、道徳や正義を備えることが先ほどの信頼に繋り、良い事業機会なのも事実です」
経「正義を売り物に?」
青「これも価値です。高いけど国産牛しか売りませんと言うアピールは良い信頼となります。訳あり商品とうたってワザと傷をつけて売るのもそろそろ消費者にばれて来ています」
経「知り合いの干物屋に訳あり商品はないかと訪れる観光客がいて、うちには訳のあるような傷物は無いって断ったって。そのほうが正しいような気がするよ」
青「正規品にワザと傷をつけても安く売れるなら、傷をつけずに安く売ればいいんです」
経「傷物って言えば売れるって、なんか違うよなぁ」
青「そういう小細工が積もり積もって良心的であれ悪意であれ、真実を知った消費者は離れていくんですね」
経「何か景気が上がりそうだけど、景気が上がれば安売り安売りって言われなくなるだろうね」
青「お客様の目線は時代と共に変わります。この20年間は極めて珍しい暗黒の時代でしたが、景気が浮揚すれば価値観もガラリと変わるでしょう」
経「景気が良くなると何をすればいいのかな?」
青「来月号をお楽しみに」

●2013年6月号掲載
 

 さぁさ、景気が上がったら…〜経営者は何をする? その1〜






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

青「さて、景気は上がりましたか?」
経「全然上がってないよ」
青「まぁ、そんなに早急には上がりませんね」
経「そもそも景気って、どうすれば上がるの?小田原周辺に好景気が来るにはどういう条件が必要なの?」
青「日本の景気が何故悪くなったのか、覚えていますか?」
経「泡が消えたからだけど、そもそも泡って何よ?」
青「バブル崩壊の直前、平均株価は4万円近かったですよね」
経「今はまだ2万円をはるか下回ってる」
青「株価と言うのはその株の発行元である株式会社の総資産を発行済み株数で割ったものが本来の株価です」
経「総資産って、不動産や預金や棚卸しした在庫やら」
青「それ以外にも人材とか可能性とかブランドとかの無形財産も入ります」
経「その株式評価が投資目的で実態以上の高額になりすぎて、市場の一端が崩れて、あとは雪崩式に崩壊したのです」
青「総量規制が原因か?」
経「原因は外国人投資家が日本のマーケットに見切りをつけて、勝ち逃げしたからです。総量規制は良い機会というか合図ですね」
青「で、どうなったの」
経「世界中のお金が日本の投資市場に流れていて、それで日本全体が潤っていたのですが、その潤いが全部海外へ移動しました」
経「日本からお金が消えちゃったんだな」
青「そうですね。商品は有るけどお金が無いから買えない。売る方も売れないなら買えるまで価格を下げる。そうすると、働き手の賃金が不足してまた買えない環境になって更に物価が下がる」
経「デフレスパゲッティ」
青「スパイラルですね。日本においては商品は有るけどお金が無い。だから日本円が貴重となり円高になる。デフレで経済が弱いのにその国の通貨が高くなるのはそういう理由です」
経「二重苦だな」
青「アベノミクス以前にも金融緩和は何度も行ったのですが、それ以上にアメリカやユーロがリーマンショック前後の経済危機を受けて速やかに金融緩和を実施したので、インフレを怖がって大胆なことが出来ない日本の金融政策は効果をもたらさなかったのですね」
経「で、今回の大胆な金融緩和につながると」
青「そうです。ここからです。今回のような量的金融緩和とは、日銀が円を発行して、金融機関が保有している国債や証券を買い上げます。すると、現金が増えた金融機関は、日銀の当座に預金を積み上げます。その預金高に比例して民間等への貸し出し額が増えますので市場にお金が回ります」
経「貸し渋りの反対か?」
青「まぁ、信用保証等、ハードルは高いですが、貸しやすくなることは間違いありません」
経「いまさらお金を貸してもらっても何に使えばいいのやら」
青「そこですっ!」
経「ギクッ」
青「お金を使わなければならないところは沢山あります。古くなった看板。色あせた暖簾。汚い床。錆びた外壁。傷だらけのサッシ」
経「傷だらけのローラ」
青「真面目にっ」
経「再びギクッ」
青「デフレで売上が減る一方。お金を掛けても帰ってこない。そんな20年を過ごしてくればそう思うことも充分理解できます」
経「なんか雰囲気違うな」
青「しかーし、その消極的な考えが看板屋さんを廃業させ、伝統技術を衰退させ、工務人口を大きく減らして日本の経済を圧迫したスパイラルの一要因なのです」
青「おいおい、大丈夫か」
経「失礼しました。ついつい興奮しました。日本はこの20年間、悪い方へ悪い方へ寄ってきました。弓矢で言えば、撃ちもせずにずっと弦を引っ張り続けた状態です」
青「おうおう、弓は限界まで力を貯めていたんだな?」
経「日本の英知やモラルや感性や忍耐力が溜まり溜まって、力がグワって蓄えたれて、そして弓を射る時が来たんです」
青「アベノミクスは?」
経「弓を放つファンファーレです。これから日本は立ち上がるんです。デフレで傷つき、震災で傷つき、幾度倒れても日本人は立ち上がるんです」
青「来月はライジングサン」

●2013年7月号掲載
 

 さぁさ、景気が上がったら…〜経営者は何をする? その2〜






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

青「さて、未だ景気は上がりませんが、上る前に心と現実の準備をしましょう」
経「準備は大切だね」
青「さて、ご主人。日本の景気が良くなると、どんな事が起こるでしょうか?」
経「え?そりゃ、うっはうはだろうな」
青「え?」
経「だから、いろいろ良くなって、おいらの小遣いも増えて、久しぶりの高級クラブでうっはうは。ってね」
青「お若いですね」
経「20年前は若かったよ」
青「景気が良くなると環境が変わります。でも、具体的に何処がどのように変わるのか?って真剣に考えている人は少数です」
経「具体的にねぇ…」
青「じゃ、話を巻き戻して、20年前と今は違いますか?」
経「…ん。さぁ、あまりピンと来ないな」
青「ご主人が20年前に通ってた高級クラブはまだありますか?」
経「そういやぁ無いね」
青「20年前に通っていた服屋さんはありますか?」
経「うーん、無いね」
青「じゃ、20年前に良く利用したお店で、今残っているところって何ですか?」
経「えーっと、あそこはコンビニになったし、あれは住宅地になっちゃったし、銀行は…合併しちゃったし、うーん、そう言われると意識している以上に変わっているんだな」
青「多分、20年前に元気でいた店の半数以上が無くなったか、または縮小したかではないでしょうか?」
経「半数以上かもしれない」
青「長い年月を掛けてじわじわ変化したので、あまり明確に変わったと意識できないものですね」
経「日々じわとじわとお店が汚れていくのが経営者当人には解からないのと同じだな」
青「そうですね。この20年に思いのほか変化しました。それが、好景気時と不景気時の環境の違いです」
経「そうか、ただ単に景気が良くなるのではなく、景気が良くなるにつれて、今の環境も大きく変化していくということだな?」
青「その通りです。つまり、今繁盛している業種がこのままの勢いを保つのは困難でしょう。新しい好景気の主役となるものは、デフレ時代の主役とは明らかに違うのです」
経「解かりやすく例えると、例えばおいらの店が白熱電球で今まではソケットに収まっていたけど、今後は蛍光灯の器具に収まらなきゃならない。環境が変わると言うことは我々事業者も変わらなければならないと言うことだな」
青「それが好景気への心の準備なんです。昔と同じ好景気が来ると油断していたら何も良くならないのです」
経「薄っすらだけどそんな気がしていたよ」
青「20年前と今が思いのほか違うように、今と景気の良い未来とは大きく違うはずです」
経「確かに…」
青「まずは環境が変わる事実を飲み込む事。そして自らの事業所が良い方向に変わる事を意識する事です」
経「意識すれば良いのか?」
青「勿論、計画と行動が必要です」
経「おいら何か不安になってきちゃった」
青「大丈夫。私たちが付いています。そういう時のためのアドバイスも出来るのが青色申告会ですから」
経「おお、頼もしいねぇ」
青「私たちもより皆様のお役に立つように、前向きに変わることが大事ですから」
経「言うねぇ。で、続きは来月号ってかい?」

●2013年8月号掲載
 

 さぁさ、景気が上がったら…〜経営者は何をする? その3 最終回〜






 

経…経営者
青…青色アドバイザー

青「いよいよ、どう変われば良いかを具体的に考えましょう」
経「何か緊張するぞ」
青「まず、客単価があがりますが、上っても大丈夫ですか?」
経「え?何だそりゃ?上がれば単純に嬉しいぞ」
青「デフレが終わり、実質インフレの時代になります。消費は拡大しますので、客単価も当然上がります」
経「ふんふん」
青「問題は、デフレのときより価値あるものを揃えられますか?って事です」
経「価値あるもの?」
青「実質インフレになると、今までとは違って実際に一人当たりの消費額が上がります。デフレのときには下がり続けましたが、正にその逆転現象です」
経「う…ん。デフレが終わるってのは解かるんだけど、高いものが売れるってのが解からないなぁ」
青「売値が高い商品というより、価値の高い商品という意味ですね」
経「解かりにくいなぁ」
青「旦那さんが以前通っていたクラブは小田原ではどのくらいのクラスだったんですか?」
経「そりゃもう上クラスよ」
青「高かったんですか?」
経「そりゃもう、一回座れば…って感じでね」
青「何故、そんな高いクラブに通われたんですか?」
経「まぁ、綺麗な若い子も沢山いたけど、何よりサービスの質がピカイチだった」
青「それです。サービスやスタッフのクオリティ」
経「何ティだって?」
青「お茶じゃありません。品質です。完成度です」
経「そうか、確かに昔の我々は品質や内容に拘っていた。というより、そういう余裕があったんだよな」
青「今すぐ実質インフレになる訳じゃなく、景気はとても長いスパンで回復するから飽くまで到達点なのです。今から数年後には、そういうコダワリが必要になるということです」
経「こだわる事。イコール、単価が高いこと」
青「そうです。必ずそうなっていくんです。既に多くの安売り大企業が、価値指向へ方向転換を始めました」
経「知ってるぞ。Mドナルドの千円バーガーとか、安売りの反対路線を行く百貨店の売上がここのところ大きく伸びているとか、小田原はまだだけど、東京ではタクシー利用が3割アップとか。倹約商品よりも嗜好品・ぜいたく品の方が伸びているのが事実」
青「よくご存知ですね」
経「2年も勉強したからな」
青「今から先の経済は、およそ何らかの重大事件が無い限りは好景気へ向かいます。小田原にも必ず消費拡大の実感がもたらされます。景気回復の波に乗るヒントは80年代の景気の上がり方です。漫才が流行り、日本酒・ワインがブームとなり、景気がぐんぐん上がり続け、その後バブルへ突入しました。バブルは避けたいですが景気がぐんぐん上がるのは前向きに歓迎すべきです。そして、その波を強くするのは、経営者一人ひとりがお客様を大切にする、喜ばすという商魂に他なりません。是非、良い景気回復を担ってください。
これをもちまして応援歌は終了となります。ご購読ありがとうございました」

●2013年9月号掲載
 


 

小田原青色申告会
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